share-knowledge’s diary

論文やニュース等で私が面白いと思ったものをアップしていきます。

ノースロップ・グラマン社とは

E-2D(アドバンスト・ホークアイ)やRQ-4(グローバルホーク)を開発してきた防衛企業のノースロップ・グラマンですが、元々はノースロップ社とグラマン社という別々の会社でスタートしました。グラマン社を創設したのは、リーロイ・グラマン(Leroy Randle Grumman)であり、彼はアメリカ海軍の操縦士からローニング社を経て、1929年に起業します。FF-1やF4Fといった艦載機の開発で評価され、冷戦中はF-14トムキャットを開発しますが、冷戦終結に伴う国防予算削減で経営難に陥ります。これを買収したのがノースロップ社でした。ノースロップ社は、ジャック・ノースロップ(Jack Northrop, 本名はJohn Knudsen Northrop)がロッキード、ダグラスの設計図技師を経て、1939年に創設します。ノースロップ社はレーダー搭載夜間戦闘機であるP-61で成功します。その後、ステルス性に特化したB-2開発に成功。艦載機開発能力の強化を見据え、1994年にグラマン社を買収し、こうしてノースロップ・グラマン社が誕生しました。

(参考)航空情報(2016年11月号)

強制外交

強制外交(Coercive diplomacy)とは、ある国が他の国に対してある種の行動をやめさせるための政策であり、その実施にあたっては限定的な軍事行動も含まれます。強制外交そのものは伝統的な軍事戦略よりは経済効率的であり、流血もなく、政治的リスクも低いですが、当然、相手国としては抵抗しますので、成功するかどうかは、様々な条件によります。

強制外交を実施するうえで、政策立案者は4つのポイントを考慮する必要があります。①相手国に何を要求するか②その要求に従う必要性に迫られているという脅威認識を相手国にどうやってもたせるか③相手国が従わない場合、従ったほうが望ましいと思わせるためにははどのような罰則を与えるか④その罰則にだけ頼るか、それとも安心感を与えるようなオプションも提示するか。

強制外交には、明示的又は暗黙的に最後通牒を出すというやり方に加え、タイムリミットなどを伝えずに、限定的な脅迫行動をとることで、相手の出方を待つというやり方(try-and-see approach)や初めに脅迫行動の度合いを高めていくことを相手国に伝え、それを漸進的に実行していくやり方(gradual turning of the screw)があります。最後通牒を伝えることは、(相手国を必要以上に刺激する可能性があることから)リスクが高いと考えられ、try-and see approach やgradual turning of the screwのやり方が好ましいと考えられています。

このようなやり方が実際に効果的かどうかは、言葉(words)と行動(actions)にかかっているといえます。どんなに強力な行動(actions)をとろうとも、相手国からブラフだと認識される可能性があります。そのため、その行動の目的や意図を明らかにするための言葉(words)や必ず実施することを伝える言葉が必要なわけです。したがって、強制外交には言葉と行動が極めて重要です。上述した④にも書きましたが、脅迫行動だけが強制外交を成功させるとは限りません。相手国に安心感を与えることもまた一つの戦略としてあります。これは、いわゆるcarrots and sticks(アメとムチ)のアプローチです。アメは交渉における譲歩などがあたります。

相手国が要求を受け入れないかどうかは、何を求めるかによります。つまり、相手国に求めるものが大した要求でなければ、受け入れる可能性があるものの、野心的な要求をすれば、相手国の抵抗は大きくなります。例えば、キューバ危機にてケネディはミサイルの撤去を求め、フルシチョフは認めたが、仮にカストロ政権の廃止等のより野心的なものを求めたならば、フルシチョフは強く抵抗したと思われます。

(参考)Geroge, Alexander,L (1991) “The general theory and logic of coercive diplomacy

決定することより重要なこと

私たちの普段の生活においても、仕事においても、何かを決定しなければいけないことというのは多々あると思います。ただ、何かを決定するという行為に関して、私たちは三つのことを忘れてはいけません。

一つは、決定すること自体が何かを変えるわけではないということです。例えば、禁煙しようとかダイエットしようと決心したところで、それを実行できなければ、何も変わりません。

二つ目は、何かを決定する時点で、私たちは、それが良いことなのか悪いことなのか、到底知ることはできないことです。私たちが決めたことが、良かったのかどうかは、決定してからずっと経って結果が出てから分かることです。

三つ目に、決定することに費やす時間よりも、決定したことの結果に付き合う時間のほうが圧倒的に長いということです。例えばビジネスにおいて、他の会社を買収する決定は、買収するかどうかを決定すること時間よりも、買収した後の結果に向き合う時間ほうが長いです。個人の生活でいえば、結婚することを決心する時間よりも、結婚後に旦那さんもしくは奥さんと生活するほうがずっと長いわけです。

 そう考えると、決定すること自体に膨大な時間をかけるよりも、決定したことから生じる様々な問題を処理するために時間をかけるほうがよほど有益のように思います。したがって、優秀なリーダーというのは、過去の決定に頭を悩ませるのではなく、決定した結果生じる様々な問題をうまくマネージしていくことが求められるわけです。

1959年にホンダは米国のモーターサイクル市場に参入しましたが、1966年には63%を占めています。この成功は合理的計画や見通しに基づいたわけではなく、計算違いや偶然そして組織学習によるものでした。ホンダは明確な戦略があったわけではなく、何度も失敗するなかで、その状況を努力して変えていき利益をあげていきました。

(参考)http://www.honda.co.jp/50years-history/challenge/1959establishingamericanhonda/page02.html

ホンダのモーターサイクル市場での成功が意味するところは、重要なことは、本来の決定ではなく、決定以降にどのような問題が起こり、それを乗り越えるために何を為すべきかということです。

これはセオドア・ルーズベルトの“The man in the arena”というスピーチにも表れています。

重要なのは批評家ではない。どのようにして強い人間がつまづくのか、こうすればもっと良かったと指摘するような人ではない。賞賛に値する人とは、その顔は泥と汗と血にまみれるも、実際にアリーナに立つ人にある。その人は、勇敢に奮闘し、何度も何度も間違え、目標に達しない、なぜなら、間違いや欠点の無い努力などないからである。それでも、その人は、実際に行動を起こそうとし、偉大な熱意、献身を知り、価値のある目的のために全力を尽くす、そして、最後に偉大な業績を成し遂げることを知る。そして、たとえ失敗したとしても、少なくとも勇気をもって挑戦した上で失敗したのであり、その人は勝利も敗北も知らない冷たく臆病な魂の持ち主には決してならない。(筆者仮訳)

 “It is not the critic who counts; not the man who points out how the strong man stumbles, or where the doer of deeds could have done them better. The credit belongs to the man who is actually in the arena, whose face is marred by dust and sweat and blood; who strives valiantly; who errs, who comes short again and again, because there is no effort without error and shortcoming; but who does actually strive to do the deeds; who knows great enthusiasms, the great devotions; who spends himself in a worthy cause; who at the best knows in the end the triumph of high achievement, and who at the worst, if he fails, at least fails while daring greatly, so that his place shall never be with those cold and timid souls who neither know victory nor defeat.”(原文)

 (参考)Jeffery Pfeffer Understanding Power in Organizations

 

CNN効果とは

CNN効果(CNN Effect)とは、CNNのような24時間のニュース報道が、政府の対外政策に影響を与えているというものです。

しかしながら、実際にニュース報道が政策に影響を与えるかどうかには議論があります。メディアが政府の政策に影響を与えるというよりも、メディアが政府や政策によって影響されているとするという意見もあります。たとえば、メディアによって報道される内容が政府の公式見解とほぼ同じであること、また、メディアの報道は政治家や官僚の関心事項に沿った形で報道されています。

近年の研究でもニュース報道が政策に影響を与えるか否かについては明確な結論が出ていません。他方、いくつかの研究(Growing, Strobel, Minear)においては、 ”政策がはっきりしていることと”と”メディアの影響”には逆相関関係があるとしています。"There is an inverse relationship between policy clarity and media influence" すなわち、政府の政策や方向性があまり定まっていない状況では、メディアは政策に対して影響を持ちます。その一方で、戦略的価値が明らかになればなるほど政策の方向性が定まり、メディアの影響は低減していきます。

また、Shawの研究においては、ニュース報道の構成が政策に影響を与える上において重要であるとしています。たとえば人道的危機においてメディアは何百名が危機に瀕しているといった客観的な報道ではなく、危機に瀕した現実の人々の映像を使い、感情に訴えかけるような報道により政治家に対して、何かしなければいけないという圧力をかけることができるわけです。

これらの研究をまとめると、政府の方針が定まっていない状況においては、メディアによる感情に訴えかけるような報道は、政府が何もしていないことを批判する圧力になり、政策に影響を与えることになります。これがCNN効果が起きるときです。

 (参考)Pieres Robinson (1999) The CNN effect: can the news media drive foreign policy

THAAD

北朝鮮からの弾道ミサイルに備えて、韓国にTHAAD(The Terminal High Altitude Area Defense)が配備されるとのことです。

THAADは迎撃ミサイル、発射台、レーダー、射撃管制装置、通信支援装置などからなります。1つの発射台に72発のミサイルを搭載できることから、多数のミサイルに対する対処が可能でき、2005年以来、13回の試験を実施していますが、すべて迎撃に成功している点も評価できると思います。ロッキードマーティンによると、以下のようなメリットがあるようです。 

  1. 大気圏内と大気圏外の双方で弾道ミサイルの迎撃が可能
  2. 大量破壊兵器を搭載しているあらゆる弾道ミサイルに効果的に対処可能
  3. 1つの発射台に72発のミサイルを搭載できることから、多数のミサイルに対する対処が可能
  4. 発射台の移動が可能であり、状況に応じて場所を移動可能
  5. PAC-3やイージスと連携して、C2BMC(Command, Control, Battle Management and Communications)を通じて統合防空能力を最大化させることが可能

(参考)ロッキードマーティンHP

http://www.lockheedmartin.com/us/products/thaad.html

 

Social Progress Index

一般的に、国力を比較するにあたり、GDPでもって比較することが多いように思います。しかしながら、GDPの大きさは生活の質と比例するわけではありません。GDPが増えれば、日々の生活が改善されるかというと、決してそうではないわけです。

そこで、経済力以外の観点も含めた指標として、Social Progress Index(SPI)という指標が提案されたわけです。SPIは、経済だけではなく、安全、健康、教育等の53の様々な指標でもって国家間を比較しています。

GDPでは私たちの生活を正確に反映させることはできません。GDPが増えたとしても、私たちの生活が向上したとはなかなか実感できないわけで、これからは、SPIのような指標でもって国家を語るほうが時代に適っているのではないでしょうか。

ちなみに、2016年のSPIでは、日本は14位となっています。

(参考)Social Progress Index 2016 by Michael Porter, Scott Stern, Michael Green

1位 フィンランド

2位 カナダ

3位 デンマーク

4位 オーストラリア

5位 スイス

6位 スウェーデン

7位 ノルウェー

8位 オランダ

9位 英国

10位 アイスランド

11位 ニュージーランド

12位 アイルランド

13位 オーストリア

14位 日本

19位 米国

26位 韓国

84位 中国

ロケット等発射により被害が生じた場合の責任

ロケットなどを発射する国は多いですが、最悪の場合、そのロケットにより被害が生じる可能性もゼロではありません。とすると、その被害は誰が責任を負うのでしょうか。

宇宙条約の第7条によると、「条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間に物体を発射し若しくは発射させる場合又は自国の領域若しくは施設から物体が発射される場合には、その物体又はその構成部分が地球上、大気空間又は月その他の天体を含む宇宙空間において条約の他の当事国又はその自然人若しくは法人に与える損害について国際責任を有する。」とあることから、ロケット等を発射したことにより、被害が生じた際には、ロケット等を発射した国に責任があります。また、第6条には、「条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動について、それが政府機関によって行われるか非政府団体によって行われるかを問わず、国際責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従って行われることを確保する国際的責任を有する。月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。国際機関が、月その他の天体を含む宇宙空間において活動を行う場合には、当該国際機関及びこれに参加する条約当事国の双方がこの条約を遵守する責任を有する。」とありますので、仮に政府機関がロケット等を発射したわけでなくとも、自国の領域内で行われた場合にも、その国が責任を有すると考えられます。