share-knowledge’s diary

論文やニュース等で私が面白いと思ったものをアップしていきます。

対外政策分析(Foreign Policy Analysis)と国際関係(International Relations)の違い

ネオリアリストは、最重要アクターは国家であり、国家は自己利益を合理的に計算した上で行動すると考えています。一方で、対外政策分析の研究者にとって、最重要アクターは外交政策立案者であり、外交政策立案者は、国家が置かれた状況を定義づけたうえで、行動すると考えています。

リアリストにとっては、対外政策は、アナーキーな世界において終わりなく安全保障を求めるものであると考えますが、対外政策分析の研究者は、対外政策は一連の問題解決タスクであると考えます。

ネオリアリストにとって、パワーが最も重要な概念ですが、対外政策分析の研究者にとっては、パワーは一情報でしかありません。

ネオリアリストは国際システムの構造が国家の行動を規定すると考えますが、対外政策の研究者は、国際システムは単なる枠組みでしかありません。

 (参考)Houghton(2007) "Reinvigorating the Study of Foreign Policy Decision Making: Toward a Constructivist Approach" P25

予算委員会

予算委員会と次年度の予算を決めるための審査を行う委員会です。予算委員会における総予算の審査は以下のプロセスで進行します。

  1. 趣旨説明と補足説明:財務大臣が年度予算の趣旨説明を行います。また、財務副大臣、内閣府副大臣から補足説明を行います。
  2.   基本的質疑(参議院は総括質疑と呼称):内閣総理大臣以下全閣僚が出席することとされており、内閣総理大臣や他の閣僚は質問に対して答弁しなければならないこととなっています。
  3.   一般質疑:財務大臣や質問通告を受けた閣僚が出席することとされています。
  4.   公聴会:利害関係者や学識経験者などから意見を聞くこととなっており、中央公聴会と呼称されます。国会法51条2項において、総予算については公聴会を開かなければならないとされており、必ず開催されることとなっています。なお、地方公聴会については、国会法や議員規則に定められた正式な公聴会ではなく、議員派遣の一形態として行われています。
  5.   分科会:予算委員会の一般質疑とは異なり、各省庁毎に分かれ、質問に対して答弁を行うこととなっています。場合によりけりかもしれませんが、各省庁ごとに質問されるため、一般質疑よりもより細かい議論がされる傾向にあります。
  6. 締めくくり質疑:内閣総理大臣以下全閣僚が出席の下、最後の質疑が行われます。この質疑を踏まえて、最後に討論および採決となります。

(参考)新・国会辞典 第3版(有斐閣)

好きな言葉:コップ半分の水(小渕元総理大臣)

今年も第193回通常国会が始まりましたが、18年前の所信表明演説にて悲観主義から建設的楽観主義を唱えた小渕元総理のコップ半分の水の例えはいつの時代にも通底するものだと思います。以下はその所信演説からの抜粋です。

  第百四十五回国会の開会に当たり、私は国政を預かる責任ある立場にいる者として、施政に関する所信の一端を申し述べます。 本年、一九九九年は一九〇〇年代最後の年であります。と同時に次の新しい千年紀、ミレニアムを迎える前夜であります。千年紀をまたごうとしているこの重要な時期に、日本は経済的な苦難に直面しております。この苦難を克服し、次の世代に力強い品格あふるる、そして美しき日本を引き継ぐため、私は身命を賭して国政運営にあたる覚悟であることを、まず冒頭に申し上げるものであります。
 冷静な状況認識はもとより重要であります。しかしながら私は、いまや大いなる悲観主義から脱却すべきときが来ていると考えます。行き過ぎた悲観主義は活力を奪い去るだけであります。いま必要なのは、確固たる意志を持った建設的な楽観主義であります。コップ半分の水を、もう半分しか残っていないと嘆くのはたやすいことであります。私は、まだ半分も残っているじゃないかと考える意識の転換が、いままさに求められていると確信するものであります。私たちが愛してやまないこの日本は、必ずやこの困難を脱することができる、そういう土性骨の座った社会を創り上げたい、そのために私は蛮勇を奮い、間もなく訪れる二十一世紀への架け橋を築くために邁進することを誓うものであります。 

(参考)第百四十五回国会における小渕内閣総理大臣施政方針演説

Emotional Intelligence(心の知能)

感情を読み取るEmotional Intelligence(心の知能)はスキルやIQの倍ほど重要であり、過去の研究ではEmotional Intelligenceを有するリーダーがいる部署は20%ほど生産性が向上したことが分かっている。

心理学者のダニエル・ゴールマンは、Emotional Intelligenceを構成する5つの要素を挙げている。①Self-awareness(自己認識)②Self-regulation(自己規制)③Motivation(動機付け)④Empathy(共感)⑤Social Skill(ソーシャルスキル)である。

  1. Self-awareness(自己認識)・・・自分を現実的に評価でき、自虐的なユーモアのセンスを持つ。また、やりすぎて無理をすることもない。自らを的確に評価できるリーダーは自らの組織も的確に評価できる。
  2. Self-regulation(自己規制)・・・感情をコントロールできる。失敗した場合にはその原因を認識し、他のメンバーにも共有し、解決方法を提案できる。感情をコントロールできるリーダーは公正さや信頼のおける環境を作り出すことができる。これにより才能あるスタッフを引き付けることができる。
  3. Motivation(動機付け)・・・仕事に対してお金だけでなく情熱で取り組み、自分の能力値を挙げたいと望む。失敗した際に、外部環境に原因を求めたり、個人的失敗だと考えがちだが、Motivationを有するリーダーは、失敗から多くを学んだと考えることができる。
  4. Empathy(共感)・・・相手が何を言いたいのかをより深く理解できる。Empathyはますます重要になっており、チームワークやグローバルビジネス、それに優秀なスタッフを引き付けるために必要不可欠である。リーダーはチームメンバーを理解し、彼らが協力的に働くように手助けする必要がある。また、グローバルビジネスにおいては、様々な文化を有するスタッフがいるため、彼らを適切に理解する必要がある。さらにEmpathyを有するリーダーは、スタッフの満足度を高め、転職率を下げることができる
  5. Social Skill(ソーシャルスキル)・・・他人に対して親切かつ友好的であり、時にはなんてこともない雑談が関係構築に結び付くこともある。Social Skillをもつリーダーは、関係を固定化せずに広げていくことができる。 

(参考)The HBR Channnel "What Makes a Leader?" 5 Dec 2016

ノースロップ・グラマン社とは

E-2D(アドバンスト・ホークアイ)やRQ-4(グローバルホーク)を開発してきた防衛企業のノースロップ・グラマンですが、元々はノースロップ社とグラマン社という別々の会社でスタートしました。グラマン社を創設したのは、リーロイ・グラマン(Leroy Randle Grumman)であり、彼はアメリカ海軍の操縦士からローニング社を経て、1929年に起業します。FF-1やF4Fといった艦載機の開発で評価され、冷戦中はF-14トムキャットを開発しますが、冷戦終結に伴う国防予算削減で経営難に陥ります。これを買収したのがノースロップ社でした。ノースロップ社は、ジャック・ノースロップ(Jack Northrop, 本名はJohn Knudsen Northrop)がロッキード、ダグラスの設計図技師を経て、1939年に創設します。ノースロップ社はレーダー搭載夜間戦闘機であるP-61で成功します。その後、ステルス性に特化したB-2開発に成功。艦載機開発能力の強化を見据え、1994年にグラマン社を買収し、こうしてノースロップ・グラマン社が誕生しました。

(参考)航空情報(2016年11月号)

強制外交

強制外交(Coercive diplomacy)とは、ある国が他の国に対してある種の行動をやめさせるための政策であり、その実施にあたっては限定的な軍事行動も含まれます。強制外交そのものは伝統的な軍事戦略よりは経済効率的であり、流血もなく、政治的リスクも低いですが、当然、相手国としては抵抗しますので、成功するかどうかは、様々な条件によります。

強制外交を実施するうえで、政策立案者は4つのポイントを考慮する必要があります。①相手国に何を要求するか②その要求に従う必要性に迫られているという脅威認識を相手国にどうやってもたせるか③相手国が従わない場合、従ったほうが望ましいと思わせるためにははどのような罰則を与えるか④その罰則にだけ頼るか、それとも安心感を与えるようなオプションも提示するか。

強制外交には、明示的又は暗黙的に最後通牒を出すというやり方に加え、タイムリミットなどを伝えずに、限定的な脅迫行動をとることで、相手の出方を待つというやり方(try-and-see approach)や初めに脅迫行動の度合いを高めていくことを相手国に伝え、それを漸進的に実行していくやり方(gradual turning of the screw)があります。最後通牒を伝えることは、(相手国を必要以上に刺激する可能性があることから)リスクが高いと考えられ、try-and see approach やgradual turning of the screwのやり方が好ましいと考えられています。

このようなやり方が実際に効果的かどうかは、言葉(words)と行動(actions)にかかっているといえます。どんなに強力な行動(actions)をとろうとも、相手国からブラフだと認識される可能性があります。そのため、その行動の目的や意図を明らかにするための言葉(words)や必ず実施することを伝える言葉が必要なわけです。したがって、強制外交には言葉と行動が極めて重要です。上述した④にも書きましたが、脅迫行動だけが強制外交を成功させるとは限りません。相手国に安心感を与えることもまた一つの戦略としてあります。これは、いわゆるcarrots and sticks(アメとムチ)のアプローチです。アメは交渉における譲歩などがあたります。

相手国が要求を受け入れないかどうかは、何を求めるかによります。つまり、相手国に求めるものが大した要求でなければ、受け入れる可能性があるものの、野心的な要求をすれば、相手国の抵抗は大きくなります。例えば、キューバ危機にてケネディはミサイルの撤去を求め、フルシチョフは認めたが、仮にカストロ政権の廃止等のより野心的なものを求めたならば、フルシチョフは強く抵抗したと思われます。

(参考)Geroge, Alexander,L (1991) “The general theory and logic of coercive diplomacy

決定することより重要なこと

私たちの普段の生活においても、仕事においても、何かを決定しなければいけないことというのは多々あると思います。ただ、何かを決定するという行為に関して、私たちは三つのことを忘れてはいけません。

一つは、決定すること自体が何かを変えるわけではないということです。例えば、禁煙しようとかダイエットしようと決心したところで、それを実行できなければ、何も変わりません。

二つ目は、何かを決定する時点で、私たちは、それが良いことなのか悪いことなのか、到底知ることはできないことです。私たちが決めたことが、良かったのかどうかは、決定してからずっと経って結果が出てから分かることです。

三つ目に、決定することに費やす時間よりも、決定したことの結果に付き合う時間のほうが圧倒的に長いということです。例えばビジネスにおいて、他の会社を買収する決定は、買収するかどうかを決定すること時間よりも、買収した後の結果に向き合う時間ほうが長いです。個人の生活でいえば、結婚することを決心する時間よりも、結婚後に旦那さんもしくは奥さんと生活するほうがずっと長いわけです。

 そう考えると、決定すること自体に膨大な時間をかけるよりも、決定したことから生じる様々な問題を処理するために時間をかけるほうがよほど有益のように思います。したがって、優秀なリーダーというのは、過去の決定に頭を悩ませるのではなく、決定した結果生じる様々な問題をうまくマネージしていくことが求められるわけです。

1959年にホンダは米国のモーターサイクル市場に参入しましたが、1966年には63%を占めています。この成功は合理的計画や見通しに基づいたわけではなく、計算違いや偶然そして組織学習によるものでした。ホンダは明確な戦略があったわけではなく、何度も失敗するなかで、その状況を努力して変えていき利益をあげていきました。

(参考)http://www.honda.co.jp/50years-history/challenge/1959establishingamericanhonda/page02.html

ホンダのモーターサイクル市場での成功が意味するところは、重要なことは、本来の決定ではなく、決定以降にどのような問題が起こり、それを乗り越えるために何を為すべきかということです。

これはセオドア・ルーズベルトの“The man in the arena”というスピーチにも表れています。

重要なのは批評家ではない。どのようにして強い人間がつまづくのか、こうすればもっと良かったと指摘するような人ではない。賞賛に値する人とは、その顔は泥と汗と血にまみれるも、実際にアリーナに立つ人にある。その人は、勇敢に奮闘し、何度も何度も間違え、目標に達しない、なぜなら、間違いや欠点の無い努力などないからである。それでも、その人は、実際に行動を起こそうとし、偉大な熱意、献身を知り、価値のある目的のために全力を尽くす、そして、最後に偉大な業績を成し遂げることを知る。そして、たとえ失敗したとしても、少なくとも勇気をもって挑戦した上で失敗したのであり、その人は勝利も敗北も知らない冷たく臆病な魂の持ち主には決してならない。(筆者仮訳)

 “It is not the critic who counts; not the man who points out how the strong man stumbles, or where the doer of deeds could have done them better. The credit belongs to the man who is actually in the arena, whose face is marred by dust and sweat and blood; who strives valiantly; who errs, who comes short again and again, because there is no effort without error and shortcoming; but who does actually strive to do the deeds; who knows great enthusiasms, the great devotions; who spends himself in a worthy cause; who at the best knows in the end the triumph of high achievement, and who at the worst, if he fails, at least fails while daring greatly, so that his place shall never be with those cold and timid souls who neither know victory nor defeat.”(原文)

 (参考)Jeffery Pfeffer Understanding Power in Organizations