share-knowledge’s diary

論文やニュース等で私が面白いと思ったものをアップしていきます。

3Dプリンタが安全保障に脅威もたらすリスク

 

Dプリンタがもたらす将来的なリスクについてランド研究所の報告書「Four Ways 3D printing May threaten securityにおいて、以下のとおり記述しています。

(1)データのハッキング

Dプリンタを使えば誰でも簡単にモノづくりができるわけですが、そのためには入力するデータが極めて重要です。したがって、3Dプリンタに入力するデータがハッカーなどにより改変された場合、完成品に不具合が生じてしまいます。個人で作るものであれば問題ないかもしれませんが、航空機エンジン部品などの産業用の製品であれば大問題を引き起こしかねません。このため、サイバーセキュリティの重要性が今にも増して重要になることは間違いありません。また、ハッカーなどによりデータ改変されていないかどうかを発見するため、南アラバマ大学のYampolskiy教授は、プリンタの作動音を聞いて小さな誤差を発見するアルゴリズムを開発中です。

(2)武器の氾濫

米陸軍の研究ではRapid Addictively Manufactured Ballistics OrdnanceR.A.M.B.O)と呼ばれる3Dプリンタで作成されたグレネードランチャーが3Dプリンタで作成された弾薬を発射することに成功しています。これが意味するところは、近い将来、テロリストが殺傷力の高い銃器、ドローンなどを3Dプリンタによって製造する可能性があるということです。銃器等ならば追跡することが可能な場合もあったかもしれませんが、3Dプリンタであればもはやテロリストの武器購入の経路を追跡することはほぼ不可能になります。

(3)経済制裁の無効化

経済制裁や禁輸措置を受けている国にとっては、精密部品の入手は簡単ではありません。しかしながら、仮に3Dプリンタと材料があれば、必要な部品を3Dプリンタで製造することができます。これは経済制裁や禁輸措置の有効性が今まで以上に低下する可能性があります。

(4)雇用を奪う可能性

産業用の3Dプリンタは今では航空機エンジン部品ですら正確に製造することができます。これを意味するところは、将来的に3Dプリンタの製造コストがさらに下がった場合、今まで人の手で行っていたことが、3Dプリンタによって代替され、結果的に3Dプリンタが雇用を奪うおそれがあるということです。ただし、いつ頃、どの程度の雇用を奪うかについては予測することは難しいです。世界経済フォーラムの分析では、3Dプリンタやロボット等の先進技術により5年で500万の仕事が失われるとあります。他方で、製造業は中国等の労働力の安い国に進出していましたが、コストが下がるということは先進国に製造基盤が戻ってくる可能性もあり、必ずしも雇用が失われるとは限りません。いずれにせよ、3Dプリンタを使える人材を育成することは必須かもしれませんが。

DIUxとは

DIUxとは、米国国防省傘下のDefense Innovation Unit Experimentalのことでして、昨今の技術進歩に対応するため、民間のイノベーション力を国防に活かしていこうとして2016年に設立されました。この背景には、2018年の国防戦略(National Defense Strategy)にも記載されていますが、敵対国がイノベーションを生み出すグローバル市場に米国と同様にアクセスしていることから、米国の軍事技術の優勢性が失われつつあるとの危機感によるものです。DIUxの年間報告書にも記載されていますが、過去数十年間、キーテクノロジーは政府の研究機関などで開発されてきたものの、現在は民間セクターが先端技術をリードしています。すなわち、公的研究機関主導であった軍事技術革新は今や民間の技術革新をいかに取り入れていくかが重要になっているわけです。この民間技術の導入のために設立されたDIUxはカリフォルニアに本部を置き、テキサス、ボストン、ペンタゴンに支部があります。

DIUxの試みとして面白いのはリクルーティングでして、国防省の公務員のみで構成されているわけではなく、ベンチャー企業を立上げ売却した実績のあるメンバー、ホワイトハウス、国防長官府や統合参謀本部でチームを率いたことのあるメンバー、シリコンバレーの企業立上げを支援したメンバー等で構成されており、スタッフ構成の面からも革新技術の導入にあたって必要な組織づくりを進めている点にあると思います。

(参考)DIUxのホームページ https://www.diux.mil/

世界の軍需企業ランキング

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)より、2016年の軍需企業の売上に関する発表があり、5年連続で減少していた売上額が5年ぶりに上昇に転じ、2015年と比較して1.9%の増加であったとのことです。前年度に比べて増加した国としては、米国、英国、ロシア、ドイツ、韓国などであり、特に韓国は20%以上増加する一方、日本、イタリア、フランス等が前年度に比べて減少しています。

報告書における企業の売上順位トップ10は以下のとおりです。(なお、報告書自体はトップ100までの記載があります。)

1. ロッキードマーチン(米)

2. ボーイング(米)

3. レイセオン(米)

4. BAEシステムズ(英)

5. ノースロップ・グラマン(米)

6. ジェネラルダイナミクス(米)

7. エアバス(欧)

8. L―3コミュニケーションズ(米)

9. レオナルド(伊)

10.タレス(仏)

ちなみに、気を付けなればいけないことは、このランキングには中国企業が入っていないことです。SIPRIによると複数の中国企業がランキングに入ると思われますが、正確なデータが明らかになっていないため、含まれていないとのことです。

(参考)The SIPRI Top 100 arms‑producing and military services companies, 2016

画像認識(Large Scale Visual Recognition Challenge)

ImageNetは画像認識の国際大会(Large Scale Visual Recognition Challenge)を毎年開催しております。2012年の大会において、トロント大学のAlex Krizhevsky率いるチームが前年の記録であるエラー率25%を大幅に更新するエラー率15%を達成しました。その後、大幅に記録が更新されており、2017年の大会においては、中国のWMWがエラー率2.2%を記録しています。下記が2012年以降の推移になりますが、近年の中国の台頭が目覚ましいように思います。その一方で、2015年の3.5%から2017年に2.2%という進捗を見ると、客観的にみると画像認識の技術進歩は少し停滞しつつあるように思います。

 

エラー率の推移

2017       WMW(中国のベンチャー企業等のチーム)           0.02251

2016       Trimps-Soushen(中国公安部第三研究所のチーム)        0.02991

2015       MSRA(中国のチーム)                           0.03567

2014       GoogLeNet(グーグルのチーム)                  0.06656

2013       Clarifai(米国のスタートアップ企業)            0.11197

2012       SuperVision(トロント大学)                    0.15315

 

(参考)ImageNet  http://image-net.org/

 

DCGAN

DCGANとはDeep Convolutional Generative Adversarial Networksの頭文字をとったもので、Generator(贋作者)とDiscriminator(鑑定士)の二つのニューラルネットワークを持っています。この二つのニューラルネットワークが戦いあうことにより、本物のような画像が作成されます。

DiscriminatorCNNとして、本物か贋物を区別する役割をもっています。一方で、Generatorはランダムなデータを一つ画像に変換することで、贋作となる画像を生成します。Discriminatorは、本物の画像と贋作の画像を用いて、両者を鑑定します。Generatorが最初に作成する贋作の画像は、本物の画像とは似つかないものになるため、Discriminatorをだますことはできません。GeneratorDiscriminatorをだませるようになるまで、何度も訓練し贋作の画像の精度を上げていきます。最後には、Discriminatorは、本物の画像とGeneratorが作成した贋作の画像を見分けることができなくなります。この結果、贋作は本物の画像の特徴をうまくとらえたものになり、本物のような画像を作成できるわけです。

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(参考)https://www.oreilly.com/ideas/deep-convolutional-generative-adversarial-networks-with-tensorflow

畳み込みニューラルネットワーク

畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)は生物の視覚野から発想を得たものでで、画像内の特徴を抽出して物体の認識を行います。例えば、私たちは犬の特徴、ネコの特徴等を無意識に認識して、犬の画像を見たときに、これが犬であることを認識します。単純な特徴としては、4本足で爪がある・・とかです。ただ、4本足で爪がある動物はたくさんいるため、より細かい特徴でもって、私たちはこれが犬だとか猫だとか認識するわけです。コンピュータも同様で、より細かい特徴(体の曲線等々)を見つけていくことで、画像を認識します。その仕組みを単純化すると、CNNでは、多くのフィルターを用いて、元の画像を3次元構造のデータに変換します。このデータにはフィルターにより抽象化された多様な特徴量が含まれています。このデータをニューラルネットワークに入力することにより、多数の特徴を踏まえて、この画像の物体が何であるかを確率として算出することができます。例えば、犬の画像をCNNで計算した結果、犬の確率95%、ネコの確率3%、ライオンの確率1%・・・・といった形で確率が算出され、犬と認識されるわけです。

ベゾスの“2枚のピザ”ルール

AmazonのCEOのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)は不要な会議を避けるために“2枚のピザ”ルール(two pizza rule)を持っています。これは会議にはピザを出すというわけではなく、2枚のビザが会議出席者に行き渡らないような人数が出席する会議はやらないということを意味しています。すなわち、会議は少人数で実施することが効率的だという考えがあるわけです。

Steven RogelbergとLarissa Barberの研究においても、多すぎる会議は会社の資本を浪費しており、より少ない会議は社員や組織の生産性を上げると結論付けています。Rogelbergは2011年に発表した論文“Wasted Time and Money in Meetings Increasing Return on Investment”にて、7~15%の会社の予算が会議に割かれていることを指摘しています。

 (参考)CNBC “How Jeff Bezos' 'two pizza rule' can help you hold more productive meetings”,“Fewer Meetings Can Boost Employee and Organization Productivity”