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Devil's advocate (悪魔の代弁者)

Devil's advocate(悪魔の代弁者)とは、グループ内での意見が画一化することを妨げ、より深い議論をもたらすための役割を演じる者のことを意味する。悪魔の代弁者は、考慮する必要があるにも関わらずグループ内の誰も主張しない不人気な意見を述べる必要がある。

政府の政策決定に関していえば、本当に政策に反対するものと異なり、悪魔の代弁者は、政治力をもつアクターではない。彼らは、政策の抱える問題を様々な角度から明らかにする役割をもつに過ぎない。それでも、Devil's advocateはいくつかの利点がある。

①否定的な意見を聞くことで、政策決定者は否定的な視点も含めて判断できたという心理的な安心感を得ることができる。
②リハーサルの効果がある。今後、似たような否定的な意見をもつ人々に、政策決定者が説明しないといけない場合、Devil's advocateの否定的な意見をすでに知っていることから、適切に対応できると考えられる。
③政策決定者は、賢い政策を選択するだけでなく、一定のコンセンサスを確保した政策をとる必要がある。少数意見への尊重がある程度確保されている場合、部下の上司への敵愾心は低くなることは過去の研究で証明されている。このため、Devil's adcocateの反対意見は、コンセンサス確保に貢献することができる。
④パブリックリレーションズとして、政策決定者は反対意見を聞いたということを広報できる。例えば、George Reedy (1970)は、Devil's advocateによって、議論によって決定がなされたことを記録として証明できると述べている。

 

(参考)George, A. L., & Stern, E. K. (2002). Harnessing conflict in foreign policy making: From devil’s to multiple advocacy. Presidential Studies Quarterly, 32, 484–508.