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平和安全法制の集団的自衛権

平成27年9月30日に施行された平和安全法制関連2法は、集団的自衛権を認めるとしたことから大きな議論を呼びました。ポイントは武力行使の3要件の一つが、従来は「我が国に対する武力攻撃が発生したこと」から「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」に変更されたことにあります。「我が国と密接な関係にある密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」が集団的自衛権を認めたと批判されたわけです。

さて、集団的自衛権は国連憲章第7章の第51条で「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、加盟国は個別的・集団的自衛権を行使できる。加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。」と規定しており、集団的自衛権を国家は当然の権利として有していると理解されています。ただし、日本政府は日本国憲法では集団的自衛権は有していても行使はできないと解釈してきたわけで、今回その解釈を変更したことが批判を浴びたのです。

ただし、今回の集団的自衛権と呼ばれるものはフルスペックの集団的自衛権とは違います。フルスペックの集団的自衛権は自国が攻撃されていない場合でも他国への攻撃を自国への攻撃と同様とみなして武力行使する権利です。有識者による平成26年5月15日の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書には「我が国と密接な関係のある外国に対して武力攻撃が行われ、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときには、我が国が直接攻撃されていない場合でも、その国の明示の要請又は同意を得て、必要最小限の実力を行使してこの攻撃の排除に参加し、国際の平和及び安全の維持・回復に貢献することができることとすべき」とされました。この報告書では、「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」として、フルスペックの集団的自衛権を限定したわけです。

そして、平和安全法制では、「我が国と密接な関係にある密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」とされており、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」が追記され、集団的自衛権は更に限定されたわけです。

個人的な意見としては、今回認められた集団的自衛権は、個別自衛権の延長でも十分可能であるように思います。その点で、今回認められた集団自衛権と個別自衛権の延長は、コインの裏表の程度でしかなく、実際にできることは大きくは変わらないように思います。