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(読書メモ)amazon―世界最先端の戦略がわかる―

成毛眞さんの著書。興味深い点は以下のとおり。 

Amazonはマーケットプレイスに3億5千万以上の商品を有しており、外部の企業がこぞってマーケットプレイスを使用している。その理由は、Fulfillment by AmazonFBA)と呼ばれるサービスであり、どのような企業でもAmazonのインフラを使用可能。すなわち、自社のECサイトがなくとも、Amazonが自社商品を海外も含めて販売してくれるため非常に魅力的。このため、多くの商品がAmazonに出品される。

 マーケットプレイスは販売のプラットフォームであり、マーケットプレイスを通じてヒットした製品はAmazonも速やかに把握可能であることから、ヒット製品についてはAmazon自身も販売を開始することで利益を得ようとする。この際、Amazonは元々マーケットプレイスで付いていた値段よりも低価格で製品を提供するため、ヒット製品を出した企業は、Amazonと低価格競争せざるを得ず、これが玩具メーカーのトイザラスが倒産した要因の一つとも考えられる。

 Amazonと楽天はビジネスモデルが全く異なり、楽天はネット上に仮想商店街を設けることで、出展企業からの手数料で稼ぐ一方で、Amazonは直販である。Amazonのビジネスモデルは、大量に仕入れ安く販売でき、別の種類のものをまとめて配送できるが、倉庫や在庫管理といった固定費がかかる。また物流網の構築にも時間と費用を要する。楽天の場合は、在庫をもつリスクはないが、出店企業ごとに販売するため、大量に安く仕入れることは難しく、商品が違えば配送がまとめられない。長い時間をかけて多額の投資により物流網を構築したAmazonと同様のことをすることは極めて難しい。

AmazonIOT家電の囲い込みが始めており、Amazon Dash Replenishment ServiceADRS)として、消耗品が少なくなったタイミングでAmazonに自動的に注文する仕組みを構築。ADRSによりプリンターのトナーやインク、洗濯機の洗剤などが少なくなっていることを把握したIOT家電を通じて、注文なしに自動的に配達される。

Amazonは起業以来、株主に配当金を払っておらず、純利益が少ないことが特徴。ただしこれは、多額の投資を行っているから。また、仕入れた商品を販売し現金化されるサイクルであるCash Conversion CycleCCC)が大きなマイナスとなっており、物が売れる前から入金されている状態になっている。例えば、外部業者によりマーケットプレイスを通じて販売された商品の支払いはまずはAmazonが受け、手数料数%を差し引いて出展企業に返される。

 Amazonが最も稼いでいるビジネスはAmazon Web ServiceAWS)というクラウドサービスである。サーバの構築には巨額の費用と長年の時間を要する。また、構築したサーバも多額の維持費用がかかる。一方で、AWSを使用すれば、15分程度で数千台のサーバを使用可能になる。これまで自社サーバを持っていた企業もAWSを利用し始めており、CIAですら2013年に6億ドルで4年契約を結んでいる。日本でも三菱UFJ銀行がAWSを採用している。世界でクラウド化されているのは5%程度であり、残り95%をめぐって、マイクロソフトとGoogleがクラウドサービスに多額の投資を行っている。なお、Amazonがクラウドで強くなりすぎており、Amazonを敬遠する動きも出てきている。

 AWSのデータセンターは世界で約53か所であり、今後12か所追加される予定。これは世界の4割のデータセンターをAmazonが持っているということになる。1つのデータセンターにかかる電力消費量は一般家庭1万世帯に相当し、データセンターのコストの半分は電力料金であることから、データセンターは寒冷地が好まれる傾向にある。なお、AWSで使われているサーバやルータ、通信制御半導体もAmazonが設計している。

無人コンビニとして話題になったAmazon GoAmazonがプラットフォーマーである観点が重要。「作ったシステムを売る」ということがプラットフォーマーとしての条件であり、AmazonAmazon Goの仕組みを売り出す可能性がある。Amazon Goで購入されたデータはAWSに収集され分析が行われ、品揃えや陳列を変更する等により多くの集客が見込まれる。したがって、もしこれが実現すれば、商店の多くがAmazon Goの仕組みを導入し始めると思われる。