share-knowledge’s diary

論文やニュース等で私が面白いと思ったものをアップしていきます。

“虫の頭脳”を模した人工知能研究

DARPAは小さな虫の脳と同様に小さく効率的なコンピューティングシステムを構築する方法について研究を始めています。このMicroscale Biomimetic Robust Artificial Intelligence NetworksMicroBRAIN)プログラムは最終的には、より少ないデータで訓練され、より少ないエネルギーで作動する人工知能を作り出すことが目的です。人の脳のニューロンは600億~700億個であり、これを人工知能で模倣することはほぼ不可能ですが、虫の脳は1000個程度であり、マッピングが可能です。DARPAは虫の脳を研究することで、効率的な人工知能の開発に繋げようしており、そのために100万ドルのファンディングを用意しています。

(参考)DARPA Thinks Insect Brains Might Hold the Secret to Next-Gen AI

 

AIの導入方法ーAI Transformation Playbookー

Andrew Ng氏はAI時代にどのようにして企業を率いるかについて“AI Transformation Playbook”にて以下の5つを指摘しています。

   Execute pilot projects to gain momentum

   Build an in-house AI team

   Provide broad AI training

   Develop an AI strategy

   Develop internal and external communications

 

Execute pilot projects to gain momentum(モメンタムを得るためにパイロットプロジェクトを行う)

最重要なAIプロジェクトよりは、まずはいくつかの簡単なAIプロジェクトを成功させることが大切です。会社内の他の従業員に対して、AIプロジェクトが投資するに値するものであると認識させる必要があるからです。なお、最初のAIプロジェクトは、外部のAIチームがあなたの会社のチームと協力しやすいプロジェクトであること、技術的に理解しやすいものであること、プロジェクトの成果が分かりやすいものであること、などが良いです。

 

Build an in-house AI team(社内のAIチームを構築)

最初は外部のAI専門家を招いてAIプロジェクトを行うことになると思いますが、長期的にはあなたの会社内のAIチームでAIプロジェクトを行うことが効率的になると思います。そのAIチームは、会社全体のAI能力の構築、様々な部署を横断的にAIにより支援、採用基準等の構築、会社全体のプラットフォームを構築(例えばデータの集約)などに責任を負うことになります。なお、AI人材の獲得は難しいことから、最初は外部のAI専門家と協力しつつ、既存のスタッフをトレーニングすることにより、AI人材を育てることが良い方法になります。

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(参考)AI Transformation Playbookより

 

Provide broad AI training(幅広いAIトレーニングを実施)

AI人材を獲得することは難しいことから、社内人材を教育することが必要です。外部のAI専門家にAIプロジェクトをしてもらうというよりは、社内人材を指導しつつ、社内人材とプロジェクトを行うことにより、社内人材がAIの経験を積ませることが肝要です。

 

Develop an AI strategyAI戦略の策定)

最初のAIプロジェクトを成功させ、AIへのより深い理解を得たならば、AI戦略の策定のプロセスに入ります。これは、AIに関する十分な経験がないと、AI戦略はうまくいかないため、最初からAI戦略の策定で始めることは好ましくないようです。AI戦略と合致するAIアセットの構築を行います。ただし、Googleのようなテック企業と競合するよりは、あなたの産業部門(製造業等)におけるAI企業となることが望ましいです。Googleのようなテック企業が保持しないデータを有する産業ならば、競争優位を保つことができます。また、データの蓄積が競争優位を保つために不可欠です。これがAIの好循環を構築することがAI戦略上大切です。なぜなら、AIはデータが鍵となるアセットだからです。そのためには、データをどう集めるかという観点と社内のデータをどう集約するかという観点が必要です。ただし、データは何でも良いというわけではなく、良いデータの集約が必要です。あまり価値のないデータの集約はAIプロジェクトを失敗に終わらせるため、どのようなデータの集約が必要かをAIチームとよく相談する必要があります。最終的にデータを集約するプラットフォームを作ることができれば勝者総取りになります。(これはプラットフォーマー問題でもあります)

 

Develop internal and external communications(内外とのコミュニケーションの展開)

最後に投資家、政府の規制、顧客(ユーザー)、人材獲得、社内コミュニケーションを行っていくことの重要性が指摘されています。

(参考)AI Transformation Playbook How to lead your company into the AI era 

IoBTとは

IoTInternet of Things)とは私たちの周りにあるあらゆるものがインターネットと結びつき、人を介さずして相互に制御しあうようなシステムであり、IoTの発展によりスマートハウスや自動運転などの新しいエコシステムが創出されつつあります。これと同じロジックが戦場にも適用されるとの考えから、戦場(Battlefield)におけるIoTということでIoBTInternet of Battlefield Things)という概念が米陸軍研究所(US Army Research Laboratory)より発表されました。IoBTは兵士と防護服、無線、武器等に埋め込まれたスマートテクノロジーとを連結させることで、兵士に超感覚的知覚(extrasensory perception)、状況把握、予見力、高いリスク評価能力を与えることになります。IoBTは少しづつ現実になってきており、20~30年後には戦場において支配的な影響力をもたらすことになる可能性があります。

 

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Army Research Laboratoryより

(参考)IoBT REIGN

 

(読書メモ)amazon―世界最先端の戦略がわかる―

成毛眞さんの著書。興味深い点は以下のとおり。 

Amazonはマーケットプレイスに3億5千万以上の商品を有しており、外部の企業がこぞってマーケットプレイスを使用している。その理由は、Fulfillment by AmazonFBA)と呼ばれるサービスであり、どのような企業でもAmazonのインフラを使用可能。すなわち、自社のECサイトがなくとも、Amazonが自社商品を海外も含めて販売してくれるため非常に魅力的。このため、多くの商品がAmazonに出品される。

 マーケットプレイスは販売のプラットフォームであり、マーケットプレイスを通じてヒットした製品はAmazonも速やかに把握可能であることから、ヒット製品についてはAmazon自身も販売を開始することで利益を得ようとする。この際、Amazonは元々マーケットプレイスで付いていた値段よりも低価格で製品を提供するため、ヒット製品を出した企業は、Amazonと低価格競争せざるを得ず、これが玩具メーカーのトイザラスが倒産した要因の一つとも考えられる。

 Amazonと楽天はビジネスモデルが全く異なり、楽天はネット上に仮想商店街を設けることで、出展企業からの手数料で稼ぐ一方で、Amazonは直販である。Amazonのビジネスモデルは、大量に仕入れ安く販売でき、別の種類のものをまとめて配送できるが、倉庫や在庫管理といった固定費がかかる。また物流網の構築にも時間と費用を要する。楽天の場合は、在庫をもつリスクはないが、出店企業ごとに販売するため、大量に安く仕入れることは難しく、商品が違えば配送がまとめられない。長い時間をかけて多額の投資により物流網を構築したAmazonと同様のことをすることは極めて難しい。

AmazonIOT家電の囲い込みが始めており、Amazon Dash Replenishment ServiceADRS)として、消耗品が少なくなったタイミングでAmazonに自動的に注文する仕組みを構築。ADRSによりプリンターのトナーやインク、洗濯機の洗剤などが少なくなっていることを把握したIOT家電を通じて、注文なしに自動的に配達される。

Amazonは起業以来、株主に配当金を払っておらず、純利益が少ないことが特徴。ただしこれは、多額の投資を行っているから。また、仕入れた商品を販売し現金化されるサイクルであるCash Conversion CycleCCC)が大きなマイナスとなっており、物が売れる前から入金されている状態になっている。例えば、外部業者によりマーケットプレイスを通じて販売された商品の支払いはまずはAmazonが受け、手数料数%を差し引いて出展企業に返される。

 Amazonが最も稼いでいるビジネスはAmazon Web ServiceAWS)というクラウドサービスである。サーバの構築には巨額の費用と長年の時間を要する。また、構築したサーバも多額の維持費用がかかる。一方で、AWSを使用すれば、15分程度で数千台のサーバを使用可能になる。これまで自社サーバを持っていた企業もAWSを利用し始めており、CIAですら2013年に6億ドルで4年契約を結んでいる。日本でも三菱UFJ銀行がAWSを採用している。世界でクラウド化されているのは5%程度であり、残り95%をめぐって、マイクロソフトとGoogleがクラウドサービスに多額の投資を行っている。なお、Amazonがクラウドで強くなりすぎており、Amazonを敬遠する動きも出てきている。

 AWSのデータセンターは世界で約53か所であり、今後12か所追加される予定。これは世界の4割のデータセンターをAmazonが持っているということになる。1つのデータセンターにかかる電力消費量は一般家庭1万世帯に相当し、データセンターのコストの半分は電力料金であることから、データセンターは寒冷地が好まれる傾向にある。なお、AWSで使われているサーバやルータ、通信制御半導体もAmazonが設計している。

無人コンビニとして話題になったAmazon GoAmazonがプラットフォーマーである観点が重要。「作ったシステムを売る」ということがプラットフォーマーとしての条件であり、AmazonAmazon Goの仕組みを売り出す可能性がある。Amazon Goで購入されたデータはAWSに収集され分析が行われ、品揃えや陳列を変更する等により多くの集客が見込まれる。したがって、もしこれが実現すれば、商店の多くがAmazon Goの仕組みを導入し始めると思われる。

中国の防衛企業

世界の防衛企業の売上高に関して、売上高が不透明であることから中国企業を含めたランキングは存在していなかったのですが、IISS(International Institute of Strategic Studies)が中国の防衛企業を含めた売上高を算出し、世界トップ22の防衛企業を明らかにしました。すでに中国の防衛企業は世界の防衛産業において大きなプレゼンスを占めているようで、以下の図のとおり、世界ランキング5位にCSGC(中国南方工業集団)、7位にAVIC(中国航空工業集団)、9位にNORINCO(中国兵器工業集団)が入っています。

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(参考)Global defence-industry league: where is China?

トゥキディデスの罠(The Thucydides Trap)

トゥキディデスの罠(The Thucydides Trap)はハーバード大学のグラハム・アリソン(Graham Allison)教授の造語であり、新興国家の台頭により、覇権国家との間で戦争が起こりうる可能性を、トゥキディデスという古代ギリシャの歴史家の名前を用いて造ったものです。トゥキディデスは古代ギリシャにおけるアテネの台頭が当時支配的な国家であったスパルタとの間に緊張関係を生みだし戦争に至ったとしています。これは第一次世界大戦前のドイツと英国との関係にも似たものがあります。アリソン教授は過去500年間に同様の事例を研究し、16例のうち12例が戦争に至ったと結論を出しています。また、戦争を避けられた事例でも、痛みの伴う調整が必要であったとしています。なお、16例の結果は以下の通りです。

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(参考)The Thucydides Trapより

トゥキディデスが示すところ、古代ギリシャにおいてアテネが政治・経済・文化的に成長するにつれ、より大きな影響力や発言力を求めることとなります。その一方で、当時の支配的国家であったスパルタは恐怖、安全保障の不安定を感じ、現状維持を求めていきます。両国はお互いに相容れず、最終的にペネポネオス戦争に至ります。アリソン教授は第一次世界大戦前のドイツと英国の関係についても述べています。第一次世界大戦を率いたドイツ皇帝ウィルヘルム2世と英国王ジョージ5世は従兄弟同士でした。ドイツ皇帝ウィルヘルム2世は英国で長い時間を過ごし、ドイツの次に英国を想っているとの発言もしています。そのような関係から、当時は誰も両国で戦争に至るとは想像していなかったようです。その一方で、当時のドイツは海軍力を強化しており、のちにキッシンジャーは、ドイツがどのような意図があろうが、英国にとっては客観的な脅威であり、大英帝国との両立はできなかっただろうと述べています。これが意味するところは、文化、血縁、経済の相互依存は戦争を防止するうえで十分な要因ではないということです。

現在、中国は目覚ましい勢いで台頭していますが、これは米国が今まで主導してきた国際秩序に多大な影響を与えつつあります。中国が米国主導の国際秩序をそのまま受け入れるかどうかについて、元シンガポール首相のリークアンユーは、中国は中国でありたいわけであり、西欧諸国のメンバーになるようなことは受け入れられないであろうと述べています。すでに中国は米国主導の国際秩序に反する形で行動してきており、米国と中国はトゥキディデスの罠の状況に陥りつつある状況なのかもしれません。なお、アリソン教授は、より頻繁な両国首脳による会議の開催等により、両国関係を管理する必要性を説いています。

 (参考)The Thucydides Trap: Are the U.S. and China Headed for War?, The Atlantic

ディープフェィク(Deepfake)

フェイシャルマッピング(facial mapping)とAIを使い、ある人物が実際には行動していない若しくは発言していないにも関わらず、行動若しくは発言しているかのようなリアルな偽動画を作り出せる技術が出てきています。このような動画をディープフェイクと呼んでおり、この名称は人工知能のディープラーニングに由来しています。

AIはある人の画像や音声データをもとに、その人の顔の表情、動き方、声、話し方を学習して模倣することができます。つまり、十分な画像および音声データがあれば、誰の偽動画でも作ることができるわけです。

米国では安全保障や選挙介入に使われることを懸念しているようで、ルビオ議員は、外国機関により人種主義的な発言や違法行為をする議員の偽動画が作成されたり、海外で米軍が民間人を殺戮するような偽動画を作成されることで、米国社会に不信感や混沌を作り出し、選挙への介入や社会の分断を作り出そうとするのではないかと指摘しています。実際、BuzzFeedは今年初めにオバマ前大統領がトランプ大統領を批判する偽動画を公表しています。ダートマス大学のFarid氏は誰もが簡単にリアルに見える偽動画を作り出すことができることが問題で、見たものを信じることが難しい時代に入ろうとしている。また逆に、真実の動画を疑うようにならざるを得ないと述べています。

これに対し、DARPAは既に偽の画像と動画を特定するための技術開発を進めていますが、現在のところ、特定するための時間はかかるため、その間に、偽画像や偽動画が広がってしまう懸念があります。

(参考)‘Deepfake’ Videos: a New Weapon in Disinformation Wars