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強制外交

強制外交(Coercive diplomacy)とは、ある国が他の国に対してある種の行動をやめさせるための政策であり、その実施にあたっては限定的な軍事行動も含まれます。強制外交そのものは伝統的な軍事戦略よりは経済効率的であり、流血もなく、政治的リスクも低いですが、当然、相手国としては抵抗しますので、成功するかどうかは、様々な条件によります。

強制外交を実施するうえで、政策立案者は4つのポイントを考慮する必要があります。①相手国に何を要求するか②その要求に従う必要性に迫られているという脅威認識を相手国にどうやってもたせるか③相手国が従わない場合、従ったほうが望ましいと思わせるためにははどのような罰則を与えるか④その罰則にだけ頼るか、それとも安心感を与えるようなオプションも提示するか。

強制外交には、明示的又は暗黙的に最後通牒を出すというやり方に加え、タイムリミットなどを伝えずに、限定的な脅迫行動をとることで、相手の出方を待つというやり方(try-and-see approach)や初めに脅迫行動の度合いを高めていくことを相手国に伝え、それを漸進的に実行していくやり方(gradual turning of the screw)があります。最後通牒を伝えることは、(相手国を必要以上に刺激する可能性があることから)リスクが高いと考えられ、try-and see approach やgradual turning of the screwのやり方が好ましいと考えられています。

このようなやり方が実際に効果的かどうかは、言葉(words)と行動(actions)にかかっているといえます。どんなに強力な行動(actions)をとろうとも、相手国からブラフだと認識される可能性があります。そのため、その行動の目的や意図を明らかにするための言葉(words)や必ず実施することを伝える言葉が必要なわけです。したがって、強制外交には言葉と行動が極めて重要です。上述した④にも書きましたが、脅迫行動だけが強制外交を成功させるとは限りません。相手国に安心感を与えることもまた一つの戦略としてあります。これは、いわゆるcarrots and sticks(アメとムチ)のアプローチです。アメは交渉における譲歩などがあたります。

相手国が要求を受け入れないかどうかは、何を求めるかによります。つまり、相手国に求めるものが大した要求でなければ、受け入れる可能性があるものの、野心的な要求をすれば、相手国の抵抗は大きくなります。例えば、キューバ危機にてケネディはミサイルの撤去を求め、フルシチョフは認めたが、仮にカストロ政権の廃止等のより野心的なものを求めたならば、フルシチョフは強く抵抗したと思われます。

(参考)Geroge, Alexander,L (1991) “The general theory and logic of coercive diplomacy