share-knowledge’s diary

論文やニュース等で私が面白いと思ったものをアップしていきます。

ポジションパワー(position power)とパーソナルパワー(personal power)

リーダーシップは二つのパワーから成立します。一つはポジションパワーと呼ばれる地位や立場に基づく力。もう一つはパーソナルパワーと呼ばれる人間力です。

米国の社会心理学者、FrenchとRaven(1959)はのパワーの源泉として Legitimate Power (正当権力)、Reward Power (報酬力)、Coercive Power(強制力)、Expert Power (専門力)、Referent Power(同一視力)の5つを提唱します。このうち、ポジションパワーに該当するのは報酬力、強制力、正当権力であり、パーソナルパワーには専門力と同一視力が該当します。

権力を使う人をAさん、権力を使われる対象となる人をBさんとすると、各権力の具体的な内容は以下のようになります。

1報酬力:BさんはAさんからの報酬を得るために、Aさんの命令・要望に従います。例えば、上司がよく働く部下に報酬を与えるのは、報酬力を使っていることになります。

2強制力:BさんはAさんからの処罰を避けるために、Aさんの命令・要望に従います。例えば、遅刻した選手に対して監督が試合に出さずにベンチで待機させている場合、その監督は強制力を行使していることになります。

3正当権力:BさんはAさんがBさんに命令・要望するに相応しい地位や立場にある人物であると信じることから、Aさんの命令・要望に従います。例えば、法廷で判決を下す判事は、正当権力を使っていることになります。

4専門力:Bさんは、Aさんが最適な解決方法をするほどの専門知識を持っていると信じていることから、Aさんの命令・要望に従います。例えば、外国に詳しいツアーガイドは専門力を持っていることになります。

5同一視力:BさんはAさんを尊敬していたり、仲間のようであると思っており、Aさんの同意を得たいと思っていることから、Aさんの命令・要望に従います。例えば、生徒に尊敬される先生は、同一視力をもっているわけです。

 なお、ポジションパワーには上の3つ以外にも、重要な情報にアクセスしたり情報統制を行う等の情報力等があります。

(参考)French and Raven Power Taxonomy

Reward Power: The target person complies in order to abtain rewards controlled by the agent.

Coercive Power: The target complies in order to avoid punishments controlled by the agent.

Legitimate Power: The target person complies becaues he/she belives the agent has the right to make the request and the target person has the obligation to comply.

Expert Power: The target complies because he/she believes that the agent has special knowledge about the best way to do something.

Reference Power:THe target complies because he/she admires or identifies with the agent and wants to gain the agent's approval.

トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップ

トランスフォーメーショナル(変革的)・リーダーシップ(Transformational leadership) は1980年代以来、最も人気のあるリーダーシップ論の一つです。今までのリーダーシップ論と異なる点は、リーダーシップの概念を拡げ、部下の成長、倫理観及び価値観をリーダーシップの範疇に含めたことにあります。

したがって、Bass(1985)が主張するように、トランスフォーメーショナル・リーダーシップは、部下が目的を達成できるようにインスパイアする、明確なビジョンを創造するなどの、カリスマ的リーダーシップやビジョナリー・リーダーシップを含むと解されます。このトランスフォーメーショナル・リーダーシップと対比される概念がトランザクショナル・リーダーシップ(Transactional leadership)です。トランザクショナル・リーダーシップはリーダーと部下の関係はTransaction(取引)を基本とするという考え方であり、高いパフォーマンスには報酬を提供し、低いパフォーマンスには罰を与えるというものです。

トランスフォーメーショナル・リーダーシップは、MLQ(Multifactor Leadership Questionnaire)というアンケートによって、評価されます。このMLQでは、リーダーの行動を7つの指標で判断します。その7つとは、①カリスマ性②モチベーションを向上させること③知的刺激を与えること④思いやりがあること⑤褒賞⑥例外によるマネジメント(MBE)⑦レッセフェール(有りの侭に任せること)です。

トランザクショナル(取引型)・リーダーシップ

トランザクショナル(取引型)リーダーシップは、報酬もしくは強制によって部下の行動に影響を与えるリーダーシップです。それゆえ、トランザクショナルリーダーシップの典型的行動は、報酬を与えることか、例外管理(Management by Exception)を実施することになります。₍Bass,1991)

なお、例外管理(Management by Exception)は積極的例外管理と受動的例外管理に分かれます。積極的例外管理(Management by Exception (Active))は、部下が標準的なやり方から逸脱していないかどうかを常に確認して、間違いがあればそれをすぐに正すようなマネージメントのやり方です。例えば、営業部門において、部下の顧客への対応が一定水準に達していない場合、上司は部下を指導してすぐに直させるようにするわけです。他方で、受動的例外管理(Management by Exeption (Passive))は、積極的例外管理とは異なり、あまり行動をおこしません。ただし、問題が深刻化して初めて、問題解決のために動き出すようなマネージメントのやり方です。

態度(Attitudes)と行動(Actions)

態度(Attitude)は人の特定の行動に直接的に影響すると考えられている。しかしながら、LaPiere(1934)の研究によると必ずしもそうではないということが判明した。LaPiereは、中国やアジア系の移民排斥運動が起きていた1930年代の米国にて、米国のレストランやホテルのオーナーは中国人にサービスを提供するかどうかを尋ねたところ、多くのものはNoと回答した。Yesと回答したものはたったの1件だった。ところが、実際にはサービスを提供しなかったものはたったの1件で250のレストランやホテルは、サービスを提供した。すなわち、態度と行動は背反した結果になったわけである。この背景には、民族差別よりも利益を優先した、もしくは民族差別を他の客が否定的にとらえ、店の評価を下げることを恐れた等々があると推察された。いずれにせよ、この研究結果により態度は行動を規定する一要因であり、すべてではないとされた。

その後の著名な研究として、態度(Attitude)と行動(Action)の関係性に関してはTRA(Theory of Reasoned Action)がAjzen(1988)によって提唱された。これは、人の行動は、その個人の態度とその個人が社会的圧力をどう認識するか、の2つによって規定されるとするものであるとする。社会的圧力とは守らなければいけない規範や周りからの忠告等々が挙げられる。例えば、周りから禁煙するように求められている(社会的圧力)としても、それを従うに値する忠告だと認識しなければ、禁煙をしようとは思わない。逆に従うべきと認識する場合は、禁煙をしようと努力する。したがって、社会的圧力をどう認識するかは極めて重要である。

また、認識は行動によって影響を受ける可能性があることにも留意する必要がある。例えば、ある女性が避妊なしの性行為を危険であると認識しつつも、パートナーからの要望で避妊せずに性行為に及び、結果として性病や妊娠が生じなかった場合、避妊なしでの性行為を危険なものと認識しなくなる可能性がある。これは行動が認識へ影響を与え、過去の行動が未来の行動に影響を与える一例である。

このTRAにPerceived behavioural controlという三つめの要因を追加したのがTPB(Theory of Planned Behaviour)である。喫煙者の例を挙げると、ある男性は煙草をやめたいと思っていて(Attitude)、周りも煙草をやめるように忠告している(Social pressure)。それにも関わらず、彼は禁煙することができない。これは、自らの行動へのコントロールが効かないと妊娠記している状況になっているからである。この場合は、AttitudeやSocial pressureが禁煙へと一致していたとしても、喫煙を続けてしまうのである。

 

(おまけ) Attitudeの定義 “An attitude is a mental and neural state of readiness which exerts a directing influence upon the individual’s response to all objects and situations with which is related”( Allport, 1935, p 810)

₍参考) Fraser,C.and Burchell,B.(2000)Introducing Social Psychology.Cambridge: Polity Press. Chapter 12: Attitudes and Actions.

                                                   

中国の防衛層(China's Defensive Layers)

USNI Newsに中国の防衛層(Defensive Layer)についての面白い記事がありました。この30年間で、軍事技術の大幅は向上を背景として、中国の防衛政策は沿岸防衛(Coastal Defense)から海上防衛(Offshore Defense)へとシフトしてきました。今や中国の防衛層は3層防衛によって成立しています。

第1層

DF-21D anti-ship ballistic missile (ASBM) の対艦弾道ミサイルで、「空母キラー」と呼ばれています。ただし、米海軍関係者はこのミサイルは高い確率で迎撃可能と述べています。また、ASCM(対艦巡航ミサイル)を備えた潜水艦も第1層での防衛のために運用が想定されています。人民解放軍のレポートによれば、すでに半分以上の潜水艦がASCMを備えているとのことです。

第2層

この層も第1層と同じく潜水艦の運用が想定されています。加えて、第2層は戦闘機の運用圏内になります。

第3層

この層では、水上艦、戦闘機、潜水艦、CDCMs (Coastal Defense Cruise Missile)(海岸防御巡航ミサイル)の4つによって本土防衛を行うことになります。

運用範囲は下記の図をご参考ください。

f:id:share-knowledge:20150424074651j:plain(参考)Global Guided Missile Expansion Forcing U.S. Navy to Rethink Surface Fleet Size - USNI News

Reflexivity(再帰性)とは

Reflexivity(リフレキシヴィティ)とは日本語では”再帰性”と訳されるのですが、定性的研究手法では必須の概念とされています。レフレキシヴィティとは、研究者が研究において設定する議題や仮説、研究対象の場所、個人的な信念や感情がどのように研究に影響するかを調べるためのプロセスの一つです。定性的研究手法(インタビュー等)では、研究者もその研究自体の一部であり、中立的な立場とは必ずしも言えません。そのため、研究内容や結果が、研究者の背景知識等によってどのように影響を受けているかを示す必要があるわけです。


一応、参考とした文献の一部を書き添えておきます。

Reflexivity is a process that challenges the researcher to explicitly examine how his or her research agenda and assumptions, subject locations, personal beliefs, and emotions enter into their research. It is imperative for qualitative inquiry because it conceptualizes the researcher as a n active participation in knowledge (re)production rather than as a neutral bystander. (Ping-Chun, 2008, p 4)  

A researcher's background and position will affect what they choose to investigate, the angle of investigation, the methods judged most adequate for this purpose, the findings considered most appropriate, and the finding and communication of conclusions" (Malterud, 2001, p 483-484)

大型貫通爆弾(MOP:Massive Ordnance Penetrator)

近年、イランや北朝鮮が核開発を地下で実施したように、軍事拠点を地下に置く傾向が強まっているように感じます。グーグルアース等に見られるように画像収集衛星等の発展に伴い、平地の軍事拠点は手に取るようにわかる状況といっても言い過ぎではないかもしれません。したがって、今後も平地の軍事拠点を地下に 移す傾向が続くのではないかと思います。

さて、この傾向にともない、地中貫通爆弾(バンカーバスター)の重要性が高まるのではないかと考えていたのですが、ウォールストリートジャーナルに よると、1月中旬にペンタゴンがバンカーバスター(地下貫通爆弾)の試験を実施したことを明らかにしたとのことです。試験はステルス戦略爆撃機であるB2爆撃機からバンカーバス ターを投下するかたちで実施されたようです。
これは以前からペンタゴンが開発を進めていたMOP(大型貫通爆弾)のことを指すと思われます。こ のMOPは米軍が開発中の最大の通常爆弾であり、30000ポンド(約13600キログラム)という大きさです。今までに3.3億ドルが開発のために費やしており、更なる開発のためにさらに4億ドルを使うことを予定されていました。今までは、航空機から爆弾を落とすと いう実験はまだ行われていなかったため、実際に核施設を破壊できるだけの能力があるかどうかは、未知数だったのですが、この記事によると、同じ目標に2回以上の攻撃を行うことで、破壊的な効果をもたらすとのことです。

 

オバマ政権はイランの核開発問題に対して、外交によって解決する努力を続けている一方で、仮に外交交渉が失敗した場合には、武力行使も辞さないという姿勢を維持していると考えられます。

 

www.wsj.com