share-knowledge’s diary

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利用可能性ヒューリスティック(availability heuristic)

認知心理学における「利用可能性ヒューリスティック」とは、何かを決める際に無意識的に使用する思考のショートカットのことを意味します。特に人はより身近で新しい情報に基づいて物事を考える傾向にあります。例えば、車の盗難のニュースを数件聞いた後なら、車の盗難は実際よりももっと身近に起こりうるものだと考えます。実際に車の事故を見た後には、車の事故に遭う可能性は客観的数字よりも高いと主観的に考えます。飛行機事故などはその典型で、飛行機事故が大々的に報道されると、飛行機は危険であると思いこみがちです。しかしながら、客観的データからすると、車の事故と飛行機事故ならば圧倒的に車で事故に遭う可能性が高いわけです。つまり、人の直感は、印象的な記憶に左右される。

 クーリエジャポ(2016 4月号)において、ハーバード大学のスティーブン・ピンカー教授は、世界の平和が暴力によって脅かされていくのではないか。という悲観的な推測には、マスコミの報道が一要因となっている。「利用可能性ヒューリスティック」と呼ぶ心のメカニズムは、未来予測をネガティブな方向に隔たせると述べています。マスコミで紛争を大きく取り上げることにより、世界は実際よりも危険だと感じてしまうわけです。

実際に、最近のIS(イスラム国)に対して空爆がニュースになることから、世界は危険だと思う人も多いですが、実際にはイラク戦争、第二次世界大戦中の空爆よりも圧倒的に数は少ないわけです。ご参考までBBC「Comparing air strikes against Islamic State to past conflicts」を観てみてください。

 (参考)A. Tversky and D.Kahnemen (1973) Availability: A heuristic for judging frequency and probability