share-knowledge’s diary

論文やニュース等で私が面白いと思ったものをアップしていきます。

メモ:マネジャーの実像「管理職」はなぜ仕事に追われているのか

ヘンリー・ミンツバーグの著書の日本語訳が出ていると友人に教えられ、早速読んでみました。興味深い点は以下のとおり。

 第1章

 学問上、リーダーシップとマネジメントを分ける傾向にあるが、ミンツバーグは、リーダーシップはマネジメントの一部であり、リーダーは、マネジメントを他人任せにしてはいけないし、マネジャーとリーダーを区別するのではなく、マネジャーはリーダーであり、リーダーはマネジャーであるべきと理解する必要があると主張する。

 マネジメントの実務には、マニュアル化してうまくいく部分はほとんどなく、効果るのある方法論などありえない。(新人マネジャー)は、どういう役割を果たせばいいのか分かっていないのに、マネジャーとして振る舞わなければいけない。マネジメントの方法論にマニュアル化できる部分はほとんどないが、暗黙知は多くある。しかし、暗黙知であるがゆえに、なかなかその全容を把握することは難しい。そのため、マネジメントは徒弟制度やメンターによる指導、直接の経験を通じて、実務の場で学ぶしかない。

年齢・仕事経験と職場との関係について

Ng(2009)の論文からの興味ある点について下記に記載。

人は他の同僚よりも年齢が高い場合、仕事への意欲が低減し、かつ同僚からのサポートを受けずらい。他方で、年齢が近いと、同僚や仕事環境にポジティブな認識を持つ傾向にある。

雇用者が十分に義務を履行できない、雇用契約の約束を果たせていないと、被雇用者者が認識することで、相互の信頼関係は崩壊する。では、被雇用者はどの程度までなら、雇用者が義務を果たせないことに対して許容できるのか。研究の結果は以下の通り。

○ 年齢が高いほど、他者を理解する等の能力が増すことから、許容範囲は広くなる。
○ 仕事の経験値が高いほど、仕事の状況に関する正確な判断ができ、かつ過剰な落胆を避けることができるため、許容範囲は広くなる。

したがって、年齢が高く、仕事への経験値が高いことが、雇用者が義務を果たせていないことに対して、寛容になる傾向がある。他方で、寛容であるがために、状況を変えるための具体的な行動に移るのにやや消極的とも言えるのではないだろうか?

年齢の高い被雇用者ほど、雇用者に対してロイヤリティー(忠誠)を示す傾向にある。

(参考)Age, work experience, and the psychological contract(2009)

キーリゾルブとフォールイーグル

毎年、朝鮮半島の緊張を高める米韓演習が今年も始まります。この演習はキーリゾルブ(Key Resolve)という指揮所演習とフォールイーグル(Foal Eagle)という部隊が実際に動く実動演習からなります。キーリゾルブは12日間でフォールイーグルは8週間を予定しており、キーリゾルブは3月2日から開始とのことです。

(参考)US-South Korea joint military drills announced - BBC News

 

モバイルデバイスとワークライフバランス

iPhone、iPad、Galaxy等のモバイルデバイスは今や私たちの生活に欠かせないものとなっています。しかしながら、これらのモバイルデバイスは仕事と私生活の壁を壊し、ワークライフバランスを悪化させる可能性があります。

実際に、携帯があるために、電波が届くところならば世界中のどこにいても、たとえ休暇中であっても仕事のメールが送られてきます。これが意味するのは、仕事が私生活にどんどん浸食してきているということです。

モバイルデバイスはどこでも連絡が取れることから仕事に置いて必要不可欠ではあるのですが、仕事と私生活の境を曖昧しているという点について、ワークライフバランスを維持するためにも注意が必要かもしれません。

いつの間にか私生活がどんどん仕事に影響されていたというのは避けたいものです。

 

(参考)Illusion of Balance and Control in an Always-On Environment: A Case Study of BlackBerry Users

 

Incident Management Team (IMT)のパフォーマンスの研究

IMTはIC(Incident Controller)、OO(Operations Officier)、PO(Planning Officer)、LO(Logistics Officer)からなる。研究の結果として分かったことは下記の通り。

1 ICは目的を伝えるが、詳細な方向性は伝えない場合と、目的を伝えずに詳細な指示だけ出す場合では、IMTのパフォーマンスは、目的だけを伝える場合のほうが良かった。

2 ICが多くのリソース(情報等)を持つ場合と、ICのリソースが限られている場合では、ICのリソースが限られている場合のほうが、IMTのパフォーマンスが良かった。情報量が多いほうが好ましいと考えられがちであるが、情報処理能力を上回る情報量がある場合、優先すべきタスクが優先されなくなってしまうからと考えられる。

3 パフォーマンスの高いチームと低いチームには以下のような差があった。
① 互いのコミュニケーションが取れており、他人が何をやっているかを把握できていた。
② パフォーマンスの高いチームは、火事の状況に応じて戦略を変更したが、低いチームは最初の戦略に固執した。
③ パフォーマンスの高いチームはワークロード(業務量)を把握し、ワークロードを最小化できるような調整を行っていた。

〇熟練度の高いIMTメンバーとのインタビューを通じて分かったこと。
IMTの最大の試練は、不確実性をマネージすること。この不確実性は情報量のオーバーロードかもしくは絶対に必要な情報が欠けているか疑わしいときに起こりうる。不確実性に対してより多くの情報を得ようとしたところで、必要な情報を時間内に得ることは難しく、意思決定の遅れがパフォーマンスの低下をもたらす。

〇インタビューで判明したいくつかの失敗の共通点。
1 IMTメンバーの経験不足が情報収集の障害となった場合
2 戦略プランが無かったため、新しい事象に場当たり的に対応した
3 情報共有が十分では無かったこと
4 メンバー間の協力や理解が不足しており、フラストレーションを溜めたこと。等々。

(参考)Decision Making Effectiveness in Wildfire Incident Management Teams (2006)

取締役会のパフォーマンス

○取締役会のパフォーマンスに関して
取締役会のパフォーマンスには、effort norms、cognitive conflicts、knowledge and skillの3つが関わってくる。

①effort norms(役員がどの程度、会社に貢献する努力をしようと考えているか)
②cognitive conflicts(役員間における見解やアイディアの違いによって生じる対立)
③knowledge and skill (役員が持つ知識と技量のことで大きく二つある。一つは専門知識と専門スキルであり、もう一つはその会社でのみ通じる知識とスキルである。特に後者は暗黙知であると考えられる)

これら3つは相互に作用してパフォーマンスに影響する。Effort normsとKnowledge and skillは直接的に取締役会へのパフォーマンスに良い影響を及ぼすが、cognitive conflictは下記に述べるように集団思考を妨げる効果をもつ一方で、取締役会の団結力を阻害することから、間接的に負の影響をもつ。

○取締役会の結束力に関して
取締役会の結束力が高い場合、意思決定に悪い影響を及ぼす可能性がある。これは結束力が高いほど、非合理な決定をもたらすgroupthink (集団思考)に至る可能性があるからである。なお、Janis (1983)は、結束力の高いメンバーは"mindguards"(意識的もしく無意識的に情報を制限し、選択肢を限定させること)となり、異なった考えをもつメンバーにたいして、多数の意見に従うようにプレッシャーをかけることで、集団思考が生まれるとする。したがって、cognitive conflictは意見対立を生むことで、集団思考を妨げる効果を有すると考えられる。

○取締役会の多様性に関して
役員は、社外取締役を含めて様々なバックグランドをもつ人々から構成される場合が多い。この多様性は、諸刃の剣と考えられる。様々な知識や経験を集約できる一方で、相手の専門領域を知らないことから、役員間の対立を生じさせる可能性が高いからである。多様性のある取締役会は、調整の困難さに直面せざるを得ない。

(参考)Forbes, D. P., & Milliken, F. J. (1999). Cognition and corporate governance: Understanding boards of directors as strategic decision-making groups. Academy of Management Review, 24, 489-505



組織文化(Organisational Culture)

シャインは組織文化を三つのレベル(Artifacts、Espoused Beliefs and Values、Basic assumptions)からなると主張しています。

(1)Artifacts (人工物)
Artifactsには我々が見たり、聞いたりする全てをの現象を含みます。例えば、建造物、服装のスタイル、話し方等々です。これを形作るのに後述する信念や価値が大きく影響します。これらArtifactsは観察することは簡単ですが、その行動や様式にどのような意味があるかを知ること困難です。例えば、エジプト人もマヤ人もピラミッドを建設していますが、彼らにとってのピラミッドの意味は全く異なります。

(2)Espoused Beliefs and Values(信奉された信念や価値)
組織内での人々の行動を規定する規則、規範、価値、イデオロギーを指します。組織の信念や価値は、究極的には誰かの信念や価値を集団が学ぶことで生まれます。例えば、売上が落ちつつある会社にて、”広告の強化が売上向上に必須”と信じるマネージャーが、それを行動に起こすとします。この行動の結果、売上が向上した場合、”広告強化を売上向上につながる”という価値感がグループ内で共有され、最終的に共有された仮説(Shared assumption:広告の強化をすれば、成功し続けるだろうという仮説)になります。

(3)Basic Underlying Assumptions(基本的な仮説)
繰り返し、問題が一つのソリューションで解決されることにより、そのソリューションは当然のものと思われるようになります。さきほどの”広告の強化をすれば、成功し続けるだろう”という仮説もこれに該当します。基本的な仮説は当然と認識されることで、議論されることもなくなる傾向にあります。その結果として、仮説を変更することは極めて困難なわけです。人間の心は基本的に安定を求めます。それゆえ、基本的な仮説を疑ったり、変更しようと試みようとすると、不安感がもたらされ、変えまいとする防衛本能が働くわけです。

シャインはこれら3つのレベルが同時に存在すると指摘し、集団学習(Group learning)として組織文化の変化を説明します。これについてHatch(1993)は、文化の変化のプロセスは、日々の組織生活の観点から説明されるべきと主張し、Cultural Dynamicsというモデルを提唱します。

(参考)Schein, E.H., 2004, “Organizational Culture and Leadership”, 3rd Edition, San Francisco, CA, Jossey-Bass – Chapters 1 (pp: 3-23); 2 (pp: 25-37) and 3 (pp: 39-61)

 Hatch, M-J., 1993, “The dynamics of organizational culture”, Academy of Management Review, 18, pp: 657-693