share-knowledge’s diary

論文やニュース等で私が面白いと思ったものをアップしていきます。

フロイト博物館

心理学者として有名なフロイト(Sigmund Freud)はユダヤ人であったことから、ナチスからの迫害を逃れるため、オーストリア併合の1938年にロンドンのマースフィールドガーデン(Maresfield Gardens)に移り住みます。翌年1939年、ロンドンにてフロイトは83年の人生を終えますが、ロンドンの家は娘のアンナ(Anna Freud)が1982年に亡くなるまで住み続けました。アンナの死後、彼女の希望によりフロイト博物館として1986年に公開されることとなります。フロイトはロンドンでも研究を続け、“Moses and Monotheism”を書き終え、未完成におわったものの“Outline of Psycholoanalysis” を書き始めています。また、マースフィールドガーデンにでも分析のため多くの患者を診ています。

閑静な住宅街の一角に今でもひっそりと佇んでいる博物館です。

航空優勢2030飛行計画(Air Superiority 2030 Flight Plan)

2016年5月に米空軍が“Air Superiority 2030 Flight Plan”という報告書を発表しました。これは2030年以降の”highly contested environment(非常に競争的な環境)“において航空優勢を担保するために必要な能力を発展させていくことを示したものになります。この報告書の中では航空優勢とは敵からの妨害なく、味方がオペレーションを進めることができるときに達成されるとされています。統合ネットワーク化された空対空、地対空、宇宙、サイバー空間の脅威の台頭により、空軍の航空優勢が脅かされることになることが想定されることから、この新たな脅威に対処する必要があると主張しています。なお、脅威は従来の航空戦力の発展(戦闘機、センサー、搭載兵器等の発展)と予測が難しい新たな脅威(サイバー空間の脅威の発展、極音速兵器、ステルス性の高い巡航ミサイル、精密化した弾道ミサイルシステム)の二つについて言及されています。この脅威に対応するためには、従来のやり方では難しく、実験、試作を通じてより速やかに先進技術を空軍に導入するという戦略的な敏捷性(strategic agility)や取得戦略が求められるとしています。報告書は5つの分野(①Basing and logistics、②Find, Fix, Track and Assess、③Target and Engage、④Command and Control、⑤Non-Materiel Capability Area Development Plan)について議論がされています。

 

(参考) Air Superiority 2030 Flight Plan, ECC Team

www.af.mil/Portals/1/documents/airpower/Air%20Superiority%202030%20Flight%20Plan.pdf

武力の行使と武器の使用の違い

報道等で見かけるワードですが、今一つ違いを明確にせずに使用している報道が多い気がしますが、「日本の防衛法制(2版)」(内外出版)によると、明確な違いは以下の通りのようです。

「武器の使用」とは、火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置を使用することです。

これに対して、「武力の行使」とは、わが国の物的・人的組織体による国際紛争の一環としての戦闘行為を意味する。

したがって、「武力の行使」は「武器の使用」を含む実力の行使であることから、「武器の使用」のすべてが「武力の行使」にあたるわけではないとのことです。

イオドとは

中国と韓国では離於島(イオド)(英語名はSocotra Rock)という暗礁をめぐる領有権問題があります。暗礁とは海面に表れていない岩礁のことを指し、イオドは海面から4.6メートル下にあります。場所は韓国のマラドから約150km、中国のHaizhao Islandからは400kmの距離にあります。ちなみに日本の鳥島から440kmのところです。

暗礁のため、国連海洋法条約上も領土とは認めれていませんし、EEZの境界にも影響しませんが、韓国は、2003年までにイオドの上に海洋科学基地とヘリパッドを建設します。これに中国が抗議するわけです。

2006年、両国は、イオドは「島」ではなく「岩」であることに合意し、領有権問題は存在しないということで合意するわけです。ただし、韓国はイオドは韓国のEEZ内であると主張します。

2011年、イオド付近で中国の漁民が韓国の海洋警察の警備員を刺殺するという事件が発生します。これを受けて、当時の李明博大統領はこの海域の警備を強化することを表明します。2013年には韓国のADIZも中国がADIZを設定する際に、このイオドを含む形でADIZを拡大させるわけです。

(参照)GlobalSecuity.org Ieodo / Suyan Rock / Socotra Rock

利用可能性ヒューリスティック(availability heuristic)

認知心理学における「利用可能性ヒューリスティック」とは、何かを決める際に無意識的に使用する思考のショートカットのことを意味します。特に人はより身近で新しい情報に基づいて物事を考える傾向にあります。例えば、車の盗難のニュースを数件聞いた後なら、車の盗難は実際よりももっと身近に起こりうるものだと考えます。実際に車の事故を見た後には、車の事故に遭う可能性は客観的数字よりも高いと主観的に考えます。飛行機事故などはその典型で、飛行機事故が大々的に報道されると、飛行機は危険であると思いこみがちです。しかしながら、客観的データからすると、車の事故と飛行機事故ならば圧倒的に車で事故に遭う可能性が高いわけです。つまり、人の直感は、印象的な記憶に左右される。

 クーリエジャポ(2016 4月号)において、ハーバード大学のスティーブン・ピンカー教授は、世界の平和が暴力によって脅かされていくのではないか。という悲観的な推測には、マスコミの報道が一要因となっている。「利用可能性ヒューリスティック」と呼ぶ心のメカニズムは、未来予測をネガティブな方向に隔たせると述べています。マスコミで紛争を大きく取り上げることにより、世界は実際よりも危険だと感じてしまうわけです。

実際に、最近のIS(イスラム国)に対して空爆がニュースになることから、世界は危険だと思う人も多いですが、実際にはイラク戦争、第二次世界大戦中の空爆よりも圧倒的に数は少ないわけです。ご参考までBBC「Comparing air strikes against Islamic State to past conflicts」を観てみてください。

 (参考)A. Tversky and D.Kahnemen (1973) Availability: A heuristic for judging frequency and probability

領海、接続水域

北方領土、竹島、尖閣諸島などの領有権問題が報道等でクローズアップされる際には、接続水域や領海、領空という言葉が当たり前のように使われています。ただし、その定義をしっかりと認識している読者がどこまでいるのでしょうか。というわけで、各定義について調べてみました。

領海

国家の主権の及ぶ海域であり、領海の幅は海岸の低潮線から12海里とされています。※国連海洋法条約 第2条、第3条、第5条などを参照。なお、低潮線とは、干潮時の海面と陸地が接する線のことであり、1海里は1852mです。

接続水域

海岸の低潮線から24海里とされています。すなわち、領海+12海里ということになります。※国連海洋法条約 第33条約を参照。

第6世代戦闘機

米国では第6世代戦闘機の開発が本格化し、海軍は2028年、空軍は2032年までの導入開始を目指しています。ただし、具体的にどのような性能を目指すのかについては明らかではなく、研究・検討している段階です。したがって、どのようなものか分からないのが現状ですが、昨今の想定としては「より遠くから先に探知してより射程の長いミサイルで先制攻撃する」ことが求められており、方向性としては①ステルス性能の向上により探知を困難にさせること②より射程の長いミサイルを多く搭載できること、の2点だと考えられます。とすると、ミサイルをより多く搭載することを目指すとすれば、大型化が進むとも想定されます。また、継戦能力も必要ですが、戦闘機は空中給油機なしには長時間飛行することは不可能です。そこで、可変サイクルエンジンの開発が進むと思われます。これは、超音速では、ターボジェットが効率的である一方、亜音速ではバイパス比の高いターボファンが効率的であり、バイパス比を変えるエンジンがあれば、燃費率が高まるからです。最後に、パワー・レーザーの搭載もあるかもしれませんが、現状、兵器としてどこまでレーザーが開発されるかは良くわかりません。

(参考)航空情報(2015年9月号)